2026/07/17 09:44

めっきでは、金属イオンを含んだ溶液の中に製品を入れ、電気を流します。
すると、金属イオンが電子を受け取り、製品の表面に金属として析出(せきしゅつ)します。
つまり、塗料を塗るのではなく、金属そのものをミクロン単位で成長させているのです。
このため、表面は本物の金属になります。
触れたときのひんやりとした感触。
金属ならではの光の反射。
そして、金属特有の硬さ。
これらは塗装では再現できません。

数十ミクロンがすべてを決める
めっきの厚さは一般的に数十ミクロン。
髪の毛1本(約80〜100ミクロン)よりも薄い金属層です。

ここで面白いのが、この薄さだからこそ、下地の精度がそのまま現れること。
表面に小さな傷があれば、その傷まで映し出します。
逆に、鏡のような下地なら、鏡のようなめっきになります。
めっきは「表面を隠す技術」ではなく、「下地を映し出す技術」なのです。

電気は均一には流れない
実は、めっきは電気を流せば均一に付くわけではありません。
角(エッジ)には電流が集中するため、金属は厚く付きます。
一方、奥まった溝や穴の底は電流が届きにくく、薄くなります。
この「付きまわり性」をどうコントロールするかが、めっき技術者の腕の見せどころです。
製品を固定する治具の位置。
電流の流し方。
液の循環。
温度。
時間。
わずかな条件の違いだけで、仕上がりは大きく変化します。

↑ 均一に金属が形成されていない
色は塗っているのではなく、金属そのもの
MYSTIC WORKSの時計には、ゴールド、シルバー、銅色など様々な色があります。
実は、これらは着色ではありません。
最後に析出させる金属が違うだけです。
例えば、
金ならゴールド
クロムならシルバー
つまり、見えている色は「塗料の色」ではなく、「金属そのものの色」。
だからこそ、光の当たり方で表情が変わり、本物ならではの深みが生まれます。

↑ 銅の玉を溶かしている所

↑ 左から順に、「銀河」「朝焼け」「陽光」
自動車と同じ品質基準
私たちのめっきは、自動車部品にも使われるプロセスと同じ技術で加工されています。
エンブレムやフロントグリルなど、何年も屋外で使われる部品と同じ考え方です。
「めっきは剥がれる」と思われることがありますが、適切な工程で作られためっきは、日常使いで簡単に剥離するものではありません。
表面には、本物の金属結晶が強固に定着しています。

めっきは、電気化学が生み出すものづくり
めっきは、ただ光らせる技術ではありません。
電気、化学、材料、機械加工。
それらが何層にも重なって、ようやく完成するものづくりです。
私たちが100年以上向き合ってきたのは、「表面を飾る技術」ではなく、金属を思い通りに育てる技術。
だからこそ、一枚の金属が映し出す光には、見た目以上の奥深さがあるのです。

